マキノ製スピンドルの精度・耐久性・高速回転性能は際立って優れていますが、それに加えて「営業マンの信頼感」が高いのがマキノと取引している理由でしょうね。 Makino's spindle stands out with their remarkable accuracy, durability and high-speed rotation function. And top of that, I guess 'the salesman gains high reputation for trustworthiness' could be the reason to deal with Makino.田口順 株式会社 田口型範(Taguchi Pattern Works)代表取締役

マキノとの出会い

田口型範は6年前に亡くなった創業者の田口貞一という私の父親が始めた会社です。牧野フライス製作所創業者の牧野常造さんと父は実際に会っていますね。日本生産性本部が米国視察団を募ったときに2カ月くらい同行させていただいたようです。当時の米国は鋳造業界や金型業界の機械化が一気に進みつつある頃でした(NCの時代にはまだ突入していません)。木型工場もこれからは木型だけではダメで、金型もやらないとマズいという意識を持っていたようで、父は視察終了後の翌年に金属加工用のフライス盤を導入しています。これがマキノとの本格的な取引です。マキノは目黒が本社ですが、とにかく現金を持っていかないと売っていただけない。当時の金額で200万円程度だった

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ようですが、まだ1万円札が存在しない頃ですから、大量の現金を鞄に詰めて目黒へ出かけたわけです。マキノの機械は当時から高品質・高価格でした。しかもまったく値引きしない。「値引きしなくても売れる(マキノのような)会社になれ」と親父に叩き込まれたのにはこんな経緯があります。今でもマキノはさほどディスカウントはしないはずです。

田口型範は現在でも木型を手がけています。少量の試作品向けは木型、量産用は金型というような使い分けが多いですね。先代は第二次大戦前に木型職人になっているので、独立したあとも木型がメインでしたが、途中から金型を手がけることになります。全国で鋳造用の、弊社に非常に似たような「型屋」さんは(数人の零細も含めれば)おそらく100社か200社くらいありますが、たいていの創業者は木型からスタートしているはずです。これができないと鋳造方案ができない。但し、プレス金型、プラ金型、ダイキャスト金型の分野は、機械加工の出身者が多くなります。

田口型範の設備戦略

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以前はマキノのマシニングセンタが圧倒的に多かったのですが、最近は様々なメーカーから用途・大きさ・タイプに応じて購入しています。特に重要なのは「立形」「横形」の使い分けでしょうか。例えば立形は金型など高い精度が要求されるワークに向いていて、段取りもしやすい。横形はワークを立ててから段取りをするため、時間がかかる一方で切粉がどんどん下に落ちていくのがありがたい。もちろんマキノは縦立形にも横形にも対応しています。

加えて、スピンドルの回転数が20年前までは1分間に3000、4000回転が最高だったのですが、毎分2万回転、3万回転で、何十時間も連続して回しても、スピンドルが耐えられるか、という点が重要になってきています。その点、マキノは非常に安心です。軸芯冷却、つまりスピンドルそのものを冷やしているので、耐久性が向上するのです。我々が工作機械で一番重要視するのはスピンドルの耐久性とそのスピンドルに関係する精度ですね。工作機械がNC化することでメーカー毎の差がだいぶ小さくなってきてはいますが、マキノ製スピンドルの精度・耐久性・高速回転性能は際立って優れていると言っていいでしょう。金型は一回載せると一つの加工を10時間以上行うことも稀ではありません。実は一般の機械加工において「実際にものを削っている時間」はごくわずかなんです。切削という行為はいかにも奇麗に加工しているように見えますが、(顕微鏡で見てみると解りますが)実際は「むしりとって」いるのです。回転数が上げられると1回あたりに「むしりとる量」が少なくて済むので結果的に高精度な加工ができる、というわけです。

金型のプロフェッショナル田口型範が導入したマキノの5軸加工機「D800Z」。高いポテンシャルを持つ同機をデリケートな温度調整が可能な状態で利用することで、高精度で「仕上げレス」な完成品を短期間に納品することが可能になった。

工作機械の運用・維持管理

マシニングセンタの維持管理・運用についてはどのメーカーも対応してもらっていますが、弊社の場合、川口と二本松(福島)に工場があるので、マキノさんのような関東のメーカーは大変ありがたい。メンテナンスに加えて、マキノは金型メーカー向けにソフト面ではCAMなどを随分前から独自開発しているし、『D800Z』に搭載されている「コリジョンセーフガード」という衝突防止ソフトの完成度が高いのがありがたいです。マキノは金型メーカー向けの納入実績が多いので、我々の慣習、あるいは経営のクセみたいなものを理解している、ということを感じます。

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田口型範自身の人材採用

弊社の場合、採用人数が多いわけではないので、特に二本松工場については地元の優秀な生徒の採用に成功しています。そしてきちんと「技術」と「技能」の基本を身につけていただきます。但し「技術」と「技能」を一緒にする人が多いですが、弊社で言えば「技術」は設計部門です。三次元の3Dのモデリングでさえ「技能工」だと言っていいでしょう。但し正直なところ「技能」に関しては高校を卒業してからでも遅いくらいです。15歳くらいから10年くらい鍛えられる環境があると、その後がまったく違う。本当に日本の技能を育てたいと思うのならそのくらいの年齢からその適正や好き嫌いを見抜いてあげる必要があります。

これからの日本の金型製作の変化

金型制作においては、どのプロセスも大切ですが、最後の「仕上げ」は、日常的に私たちが使っているその言葉の感覚とは相当かけ離れた重要な作業です。機械のオペレーター要員として採用している社員にも最初から仕上げ、組み立てに関わってもらいます。その経験があると、どういう加工が一番金型にとって高精度で、かつ仕上げに手がかからないものが設計できるか、ということがわかるのです。ただ、金型の場合は完璧に、本当に仕上げ100%自動化ができるか、と言われたら、基本的にそれは永遠に無理でしょうね。

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平面や、なだらかな傾斜・局面だったら、もう仕上げレス、で出来ます。それで、エンドビットで加工しても、1度くらいのミドル勾配だとちょっと製品を抜くときに引っかかる可能性がある。縦にヤスリなり、砥石をかけるということになります。そういう意味で、こういう壁と底面の付け根が非常に金型の場合は重要なので、ここが5軸、5面加工機は非常に有効ですね。きれいに加工できる。仕上げレスということになると、絶対、表面の加工したあとの面がきれいになっていなければいけない。それを使いながら、最終的にはやっぱり無人化、無人でできるだけ加工していくというのは我々の究極の合理化であり、すなわち残念ながら自動化の方向になっていくでしょう。機械を上回る技術こそが、金型メーカーに求められているのです。

マキノの技術/印象について

マキノの営業の人は知識レベルも含めて総じて高いですね。ただ、知識レベルだけのハナシなら他社にも高い人はたくさん存在するわけですが、マキノの営業の特徴は「信頼感」でしょうね。この「信頼感」がどこから出てくるものなのだろう、というのが少し不思議だったのですが、最近ようやくその秘密がわかったような気がします。
これはちゃんとした調査をしたわけではない印象論ですが親子で勤務している人が多いのです。つまりドイツのマイスター制に近いと言えるでしょうね。もちろん現在のマキノの規模からしたら「代々マキノに勤務している人の割合」など微々たるものだと思うのですが、ある種の「家族経営」に近いムードがあるんでしょうね。これが信頼感につながっている気がします。

真心のものづくりなら日本

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日本人は金型に限らず、工作機械をつくるに当たっても、いわゆる“ものづくり”、に非常に向いている国民性があると思います。「日本の中小企業はまごころでものをつくる」ということだと思います。この“まごころ”は自分の職業に対する誇りに起因しています。そして顧客第一主義、ということですね。同じISO 9001でも「顧客第一主義」が貫かれているのは日本だけでしょう。加えて「チームワークの良さ」でしょうか。100種類以上の工程をみんなで分担しているときに、トラブルが発生したときにその前後の工程の人が助ける習慣があるのは日本だけのような気がします。これが“いいものづくり”の要因になっています。お金のために働いている、という意識は希薄でしょうね。そもそも儲けたいだけなら“ものづくり”など手を出さないほうがいいわけです。マキノが値引きしないのは「高品質の“ものづくり”を提供して納得していただきなさい」という信念みたいなものに基づくと思うのです。

田口型範にとっての工作機械とは

弊社の事業は鋳造用木型・鋳造用金型・五軸加工・試作の4本柱に対して13台の5軸工作機械と30台の3軸工作機械が利用されています。文字通り「マザーマシン」です。私にとっては工作機械は、基幹的な、基礎的なツール、つまり「道具」なんです。工作機械が本当に進歩してすばらしい道具になったとは思うけど、所詮、道具に過ぎない。し

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かしこの「道具に過ぎない工作機械」が日々ブラッシュアップされているか、いないかということで我々が提供する金型の品質が決定的に違ってくる。

弊社が一番大事にしているのは「方案図」です。要するに設計図なのですが、膨大な量が保管されています。前の人が作った設計図をベースに新しい設計図を起こしていく。つまり「金型の金型」のようなものになるわけです。保管しつつ書き換えていくことになります。ここに長年の経験が積み重なっていくわけです。道具としての工作機械も同様でしょう。すなわち長年の経験が現在の品質を作っているはずなのです。道具のブラッシュアップが方案図のブラッシュアップになります。そういう意味で私たちにとってマキノはとても心強いパートナーです。

田口型範

昭和22年創業。鋳造用木型/金型製作で培ってきた技術と技能をアナログで残すものとデジタルに置き換えるものとのバランスを取りながら開発するのが特徴。自動車・産業機械・航空機さらには宇宙開発関連の分野まで、田口型範が製作した木型・金型から作られた鋳造部品が利用されている。同時5軸CNC加工を駆使した羽根類加工を主力とした川口・本社工場と、中大物木型・金型を得意とする福島県二本松工場の2事業所、およびそれぞれの特色を持った企業とのネットワークを最大限に活かしている。

株式会社 田口型範(Taguchi Pattern Works Co ,Ltd)
代表取締役 田口 順
〒332-0032 埼玉県川口市中青木2-20-15  TEL :048-251-2765

http://www.tpw.co.jp/



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